ガーデンショップの新築設計

ロザ・ヴェール

ROSA VERTE

山梨県の石和温泉で20年続く、バラの生産と販売を行っていた旧店舗。売り場にはバラが咲きこぼれ、建物や温室がみどりの陰に沈み、理想的なみどりと建物の関係を打ち出していた。今後のリニア開通を見越して開発が目覚ましいエリアへの移転が決まり、大きな更地と出会ったのが数年前。事業のための建築であるため、そのコストパフォーマンスを強く発揮すべく、主要構造を軽量鉄骨とし、シンプルな平面形状でより高い空間価値が得られるよう、トラス梁を用いたプレファブ工法を採用した。建物の外壁は将来的に全てバラやその他のグリーンで覆われる計画。そのために建物の外壁材と土との関係、その高低差、距離感、軒下空間の構成など、植物にとって心地良い建物との寄り添い方を最大限重視した。

敷地面積1,779.10 ㎡
建築面積228.69 ㎡
延床面積 228.69 ㎡
階数地上1階
構造鉄骨造
URLhttps://www.komatsugarden.co.jp/
バラ苗越しに見る南西側の建築ファサード。木板と波板外壁が印象的な外観。大開口を介して、内部と庭空間がつながる計画。
平面イメージスケッチ 「お店としてバラやグッズが売れることはもちろん必要。でも、それ以上にこれまで植物にあまり興味のなかった人たちが来店したことで 植物に興味を持ち、自分たちの庭環境でグリーンのある生活を実践するきっかけづくりに協力したい」 オーナーのこの思いに応えるべく、3つのスペースのゾーニングが行われている。 主に物販を目的としたショップスペース、ガーデニングレクチャーを行うスクーリングスペース、その2つの空間に挟まれる温室空間。 それぞれのボリュームは仕上げを変化させ、幾つかの外壁と開口部、その前に広がる庭の関係性においてイメージしやすい環境をつくっている。
南側エントランスを見る。フランス製波板(オンデュリン)とバラ(ギーサヴォアとルージュピエールドゥロンサール)の相性。波板を留めているボルトがバラ誘引のかかりとして活用されている。
初期提案パース
当該敷地の背後(西側)に計画されている大規模な公園や新興の住宅地の入居者がこのお店に立ち寄りみどりの造詣を深め、マイホームの外構に彩りを添えていく。そのアンテナショップとして、この店舗のハード(バラ)とソフトは今後醸成されていく。街全体を見据えたグリーンチェーンの概念の通り道として温室空間が機能することをイメージしている。

コマツガーデンについて

1987(昭和62)年より、当時としては珍しいオールドローズとイングリッシュローズに特化した自社生産と通信販売、実店舗販売を行うガーデンショップとして営業。清らかな水、豊かな大地に恵まれた山梨県白州町(現北杜市)にて育てられたバラ苗を全国に届けている。2006年からコマツローズクラブバラ実践教室を主宰し、3年間コースでローズアドバイザーを養成している。(写真は旧店舗)


(左)平面図 おおよその植物は東の光を好む傾向がある。そのため道路に接する東側に建築と一体化する庭を計画。
       回り込んだ西側に駐車場を設け、バラと共にある建築の世界観を街路に提供することを意識した。
(右)東西立面図 各々の外壁がバラで覆われる計画。
(下)断面図 街へ通り抜けができる販売スペース。
内装イメージパース 音・光・風などが建物内部に入り込み、内外が緩やかにつながる。
インセットしたサッシにより外部の庭の雰囲気を取り込む窓辺のアルコーブ。
カウンタ―製作スケッチ このスケッチをもとに上記写真の什器を製作した。