改修設計のポイントは以下の3点である。神南(明治神宮の南)エリア突端に位置する敷地に分杜森としてのグリーンボリュームを再構築し、環境建築として再生させること。既存建物を活かし、限られた敷地要件のなかで商業建築としてのシンボル性、街角に相応しい社会貢献性を念頭に多重的なみどりのファサードを構築させた。次に商業建築としての事業性を良化させ、デジタルサイネージ広告とみどりを融合させること。アーチ壁面の見込部分にサイネージを施すことにより、みどりの土壌がデジタルであるかのような錯覚と、街並みのリアルと画像のアンリアルが交錯するような感覚を生じさせた。サイネージ面は湾曲する通りに対して垂直に配される格好となるため、歩行リズムに合わせて街の情景、みどり、広告が交互に出現することをイメージした。最後に、これまでの広場としての機能を最大化すること。雨がしのげる大きなキャノピー機能を活かし、居心地の良いたまり場となる広場に再生した。緑化は内外共にプランター式の壁面緑化システムを開発し、商業開発者が望む初期緑化を実現。みどりが織りなすアーチにトリミングされた渋谷の街並みとみどりのコントラストを広場内から楽しむことができる。
コラボレータ― | 鹿島建設 |
敷地面積 | 1,980㎡ |
建築面積 | 1,836㎡ |
延床面積 | 15,841㎡ |
階数 | 地上9階 |
構造 | 既存SRC造 |
渋谷の街角を彩る神南の森
多種多様な人種やカルチャーが交錯する渋谷の街並みに相応しい、国際色豊かなグリーンデザインになることをイメージした。湾曲する各々のファサードは東向き、南向き、西向きに分類して考えることができる。比較的日照の安定している東面はフレッシュなイメージが伝わるハーブ系の植物や果樹、正面となる南面には神宮の森でもよく見る植生を中心に、日射の厳しい西面には乾燥に強いオーストラリア系の樹木を中心に植え込みを行っている。壁面ながら、豊富な土量(植栽基盤)により各々の樹木は厚みを持って成長し立体感を演出する。そうして行き交う人々は植物の成長を眼前で捉えることができ、季節の移ろいや普段気にも留めない植物の姿になにかを感じることができるかもしれない。