この建築はかって私が在籍していた石山修武研究室によって設計された個人邸である。類いまれな縁があり、我々が改修設計を行うことになった。世田谷区代沢。せせらぎのある緑道沿いにあるこの住宅は、氏の設計理論がそこかしこにはめ込まれており、懐かしい感覚があると共に、現状とクライアントの要望する空間イメージとの乖離を埋めていく作業が必要であった。築30年が経過しており、断熱や防水性能を見直す必要があったこともあり、フルスケルトンとしてプラン調整を行った。増築されたサンルームは解体して当初設計にリセットすることも画策したが、結果北側の大きな光だまりとして残し、贅沢なスペースとなっている。
敷地面積 | 84.29㎡ |
建築面積 | 40.77㎡ |
延床面積 | 133.45㎡ |
階数 | 地上3階 地下1階 |
構造 | 既存木造 / RC造 |
光と共に人が巡り 気が巡り 時が巡り 音が巡り 風が巡る
石山修武氏の設計エッセンス。船底のような天井。屋根に降り注ぐ雨が集水される底。その庇を支える鉄道用のテンション部材。車両用ハッチから行き来する屋上。禁欲的な開口設計。幾つかの当初設計のエッセンスを残しながら、光のあり方とそれに追従する気の巡りを再編集した。それはトップライトから差す直接的な光、側窓から差し込む時間を感じさせる木漏れ日、船窓から差すハイサイドライト、植物の葉裏を照らす光、簾を透かして入り込む光、短冊状のガラス床から差し込む幻想的な光、地階に届く鈍い光。これらが渾然一体となって巡る家を形つくる。