テラスハウスのリノベーション

鵠沼ヴィレッジ

Kugenuma Village

スクラップアンドビルドによる開発も検討された既存建物は、長く空き家となっていた。今回、近隣住民や地球環境への負荷の軽減、失われつつある旧別荘地・湘南鵠沼の情緒を残していくことが価値であるとし、リノベーションによる事業化に至った。我々は1つの敷地のなかに各建物が散在している形を活かし、ビレッジ型コミュニティの実現を目指した。緩やかなカーブを描く竹垣、共用の桟敷きテラス、シャワー、各棟のナンバリング、そこかしこが子どもの遊び場になる路地空間。住人が専有、共有とセグメント分けせずに、敷地一帯を共有スペースとして意識することで「自分たちの庭」という意識が芽生え、住人自らが協同でビレッジの価値を維持していくことに繋がると考えた。

象徴となるシンボルツリー、路地の曲がり角や突き当たりに季節を感じさせ、アイストップともなる草木、共用空間に彩りと収穫の楽しさを与える果樹、シーサイドエリアの魅力を伝え、浜辺をイメージさせる耐潮性のあるグランドカバー。開放的な湘南ライフやおおらかなヴィレッジの雰囲気を演出するため、外観のカラーリングを行い、周辺環境特性に応じた多くのグリーンを配している。また、オープン外構のコンセプトのもと、機械的なセキュリティー設備に頼らず、垣根の無い隣人関係が、結果的に安全性を生み出すという考え方から、道路境界線には一切のフェンスはつくらず、誰でも入って来られる計画となっている。加えてこの場所に8世帯が暮らしていることが外部から認識できるよう、各建築ファサードに棟名、各世帯のサインを明快に施した。サインやポスト、カラーによる群棟としての一体感を出すことで心理的な境界をイメージさせながらも、目に見える境界を設けないことにより、このヴィレッジで生まれたコミュニティが街へと広がっていくようなことをイメージした。