テラスハウスのリノベーション

鵠沼ヴィレッジ

KUGENUMA VILLAGE

スクラップアンドビルドによる開発も検討された既存建物は、長く空き家となっていた。今回、近隣住民や地球環境への負荷の軽減、失われつつある旧別荘地・湘南鵠沼の情緒を残していくことが価値であるとし、リノベーションによる事業化に至った。我々は1つの敷地のなかに各建物が散在している形を活かし、ビレッジ型コミュニティの実現を目指した。緩やかなカーブを描く竹垣、共用の桟敷きテラス、シャワー、各棟のナンバリング、そこかしこが子どもの遊び場になる路地空間。住人が専有、共有とセグメント分けせずに、敷地一帯を共有スペースとして意識することで「自分たちの庭」という意識が芽生え、住人自らが協同でビレッジの価値を維持していくことに繋がると考えた。

敷地面積568.00㎡
階数地上2階
構造既存RC造
桟敷きテラス周辺のスペースを見る。住人参加のワークショップイベントを企画。共有外部テーブルと樹木板の作成。果樹に囲まれたテーブルにもベンチにもなる桟敷スペースを活用。各棟の境界線は外構計画により曖昧なものとなっている。

街へ広がるオープン外構のヴィレッジ形態

象徴となるシンボルツリー、路地の曲がり角や突き当たりに季節を感じさせ、アイストップともなる草木、共用空間に彩りと収穫の楽しさを与える果樹、シーサイドエリアの魅力を伝え、浜辺をイメージさせる耐潮性のあるグランドカバー。開放的な湘南ライフやおおらかなヴィレッジの雰囲気を演出するため、外観のカラーリングを行い、周辺環境特性に応じた多くのグリーンを配している。また、オープン外構のコンセプトのもと、機械的なセキュリティー設備に頼らず、垣根の無い隣人関係が、結果的に安全性を生み出すという考え方から、道路境界線には一切のフェンスはつくらず、誰でも入って来られる計画となっている。加えてこの場所に8世帯が暮らしていることが外部から認識できるよう、各建築ファサードに棟名、各世帯のサインを明快に施した。サインやポスト、カラーによる群棟としての一体感を出すことで心理的な境界をイメージさせながらも、目に見える境界を設けないことにより、このヴィレッジで生まれたコミュニティが街へと広がっていくようなことをイメージした。

ヴィレッジの北側より、西側道路に面する3棟を見る。各棟のカラーは鵠沼エリアをイメージさせるものとした。
完成ファサードイメージ。1、2階それぞれのアプローチの確立と駐車スペースの確保を図りながら、ファサードの均整を整えることを重視した。4棟のカラーリングにはオーストラリア製のポーターズペイントを採用。グリーンとの相性も良く経年変化を味わえる。
Before写真。かつてのタイル貼りの外観。
外構平面図
専用庭は緩くカーブを描いて区画されており、4棟の周囲はコンクリート平板や砂利、枕木によってなんとなしに動線が描かれている。それぞれの世帯の子どもたちが隔てなく駆けまわったりゲームするイメージ。
リノベーションデザインにおける詳細図。イメージの共有と製作の図解を兼ねることによって、つくり手のクリエイティビティを高めていくことができる。
隣棟間を繋いだパーゴラにフジが繁茂している。その下で子どもたちが集まって遊んでいる。
専有部と共有部という概念は極めて曖昧であり、境界は植物と個々人のモラルによって担保される関係性。建築とフェンスの間はコンクリート平板と砂利の関係。両端に日陰でも花付きの良いシャガなどを植え込み路地を演出。
境界を曖昧にすべく割竹をカーブさせただけの簡易なフェンス。シマトネリコなど常緑の軽やかな木で緩く目隠しを。
車の下の目地は暗いので砂利としているが車の停車頻度によっては芝生が自然に広がり砂利と混ざっていく計画。
家の前はサルスベリ。サルスベリは感じで「百日紅」。つまり3ヶ月花がついているということが学べる。